黒留袖の着物とは?基本ルールと着用マナーをわかりやすく解説
黒留袖の着物は、既婚女性が結婚式に着るというイメージを持つ人は多いでしょう。しかし、「母親以外が着るのはマナー違反?」「20代でも既婚なら黒留袖?」「どうやって黒留袖の柄を選べばいいの?」など、疑問も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、初めて黒留袖を着る人のために、いつ誰がどのように着るのかなどの基本ルールや、小物の選び方をご紹介します。大切な親族の結婚式でマナー違反をしないためにも、ぜひ押さえておきましょう。
なお、色留袖については、こちらの記事をご確認ください。
■黒留袖とは
まずは、黒留袖の基本から見ていきましょう。いつ誰が着るべき着物なのか、黒留袖を着てはいけない人は誰なのか、基本を知っておくと安心です。
・黒留袖はどんな着物?
黒留袖は、既婚女性の正礼装(第一礼装)として位置付けされています。着物のなかでも最も格が高いことから、着る場面も限られています。
特徴は、黒地に染め抜きの五つ紋(背中・両胸・両後袖)と裾模様です。裾の模様は、上前衽から下前までつながり、この柄を「絵羽模様(えばもよう)」と呼びます。
・黒留袖はいつ、誰が着る着物?
結婚式や披露宴で黒留袖を着るのに相応しい立場の人は、新郎新婦の母親と親族、仲人夫人となり、両家の着物の格を合わせるのが一般的なマナーとなります。そのため、新婦の親族が黒留袖を着る場合は、新郎の親族も黒留袖が求められるため、事前に親族間で確認しておくことをおすすめします。
また、結婚式に仲人を立てる場合は、新郎新婦の装いの格と仲人の格を合わせるのもマナーとなりますので、新郎新婦が正礼装の場合は仲人夫人も正礼装の黒留袖を選ぶのが一般的です。なお、友人・知人の立場で黒留袖を着るのは、マナー違反となるため注意しましょう。
ちなみに昔はお宮参りの際に赤ちゃんの父方の祖母が黒留袖を着るのが一般的でしたが、近年では行事の簡素化なども進み、訪問着や洋服でのお宮参りも増えています。
・黒留袖の柄の意味
黒留袖は、おめでたい席で着られる着物のため、染めや箔、刺繍を用いて吉祥文様(きっしょうもんよう)が描かれています。この吉祥文様とは「良い兆し」や「おめでたい印」などの意味を持つ、縁起のよい柄です。例えば、松竹梅や四君子(しくんし)、宝尽くしなどが代表的です。
■黒留袖の選び方
ここからは、結婚式で黒留袖を着る場合の選び方を見ていきましょう。新郎新婦との続柄や着る人の立場別にご紹介しますので、自分に合った黒留袖の選び方を押さえてみてください。
なお、全ての立場の人に共通して柄を選ぶ際には、裾に描かれた柄の面積が大きければ大きいほど若い人向きであり、面積が小さく柄の位置が低いほど年配の人向きとなります。また、背の高い人が低い位置の柄を選ぶと、黒地部分が多くなり、背の高さを強調して寂しい印象を与えてしまう可能性もあります。これらも踏まえて、実際に着用してバランスを見ながら選んでみてくださいね。
・新郎新婦の母親
結婚式の主役は、新郎新婦です。そのため、新郎新婦の母親は、落ち着いた柄や格調の高い柄の黒留袖を選ぶとよいでしょう。鶴や亀、鳳凰(ほうおう)、松竹梅などの吉祥文様の黒留袖を選ぶことで、お祝いする親心を演出できます。
・仲人夫人
仲人夫人の立場で黒留袖を選ぶ場合は、主役の花嫁を引き立てるという視点を持ちましょう。伝統的な古典柄など、落ち着いた柄の黒留袖を選ぶとよいでしょう。なお、柄が広範囲に入っている場合は、色にもよりますが派手な印象を与える可能性がありますので、仲人夫人の年齢を問わず、避けた方が無難でしょう。あくまでも上品に、落ち着きのある雰囲気でまとめることをおすすめします。
・年配の人
年齢を重ねた人は、裾模様の小さな黒留袖を選ぶと上品に見えます。色味が少なく、すっきりと描かれている黒留袖を選ぶことをおすすめします。
・若い人
10代~30代の若い人でも、既婚女性であれば黒留袖を着ること自体に問題はありません。若い人にとって黒留袖は地味というイメージがあるかもしれませんが、広範囲に模様が入っていたり、膝上まで美しい色や大きめの柄が配置されていたりするデザインであれば、華やかな印象になります。または、黒留袖のデザインは抑え気味で、華やかなデザインの袋帯を選ぶのもよいでしょう。しかし、他の親族の人ともバランスを取る必要もありますので、決める前に親族と相談することをおすすめします。
■黒留袖の帯や小物の選び方とマナー
ここまでに黒留袖を着るシーンや立場・年齢別の選び方をご紹介しましたが、意外とシンプルに感じた人も多いのではないでしょうか。基本さえ押さえてしまえば、黒留袖を着るのは難しくありません。最後は第一礼装として黒留袖を着用する際の、帯や小物の選び方を見ていきましょう。
・帯
黒留袖に合わせる帯は、「袋帯」を選びます。例えば、糸錦(いとにしき)、唐織(からおり)、綴織(つづれにしき)など格調高く、金糸銀糸を多く使って織られた華やかな袋帯を選ぶとよいでしょう。また、袋帯の柄は、吉祥文様の「花喰鳥文」や、正倉院文様を代表するモチーフの「宝相華文(ほうそうげもん)」などがおすすめです。結ぶ際には、「慶び事が重なるように」と、お太鼓部分を2枚重ねて二重太鼓にします。
・帯揚げ・帯締め
帯揚げとは、帯枕を包むものを指します。基本は白色ですが、金・銀の縫い取りが入っていたり、総絞りのタイプの帯揚げを選んでも問題ありません。
また、帯締めは、帯の上に締める紐を指します。アクセントの一つにもなっているため、白または金糸や銀糸が入ったタイプを選ぶと華やかさが加えられます。ただし、帯揚げ・帯締めともに色糸が入っている場合は、カジュアルな印象となるため黒留袖では避けるようにしましょう。
・ハンドバッグ、草履
黒留袖と合わせるなら「礼装用草履」「礼装用ハンドバッグ」がおすすめです。これらを選ぶ際には、ハンドバッグと草履の素材を合わせると、より上品な印象になります。なお、礼装用ハンドバッグは、上品で小さなサイズが一般的です。もし、荷物が多い場合は、サブバッグも用意しておくと安心です。
■まとめ
黒留袖は、着る機会が少なく、初めて着るという人も多いでしょう。結婚式で着用する場合は、ルールやマナーもありますので、戸惑ってしまうかもしれません。まずは両家の格を合わせる必要もありますので、親族同士で十分に相談することをおすすめします。
また、黒留袖をお持ちでない場合は、レンタルを利用するのも一つの手段です。レンタルであれば、着付けに必要な一式が小物まで全て揃いますので、手間がかからず安心です。
VASARAの着物レンタルでは、結婚式にもご利用いただける吉祥文様の黒留袖をご用意しています。着付けから小物のレンタルまで一式お任せいただけます。また、オプションではヘアセットのご用意もございます。立場や年齢に応じた黒留袖の選び方や、不明・不安な点などがありましたら、お気軽にご相談ください。