着物の帯の種類や結び方について詳しく解説!
着物の帯には、さまざまな種類があります。種類によってサイズなどの特徴が異なるのに加え、いわゆる「格」の高さにも差があるため、どのようなシーン・どのような着物に用いるかを考慮し、適切な帯を選ぶことが大切です。
また、それぞれの帯に合う定番の結び方や、アレンジした結び方を知っておくと、いざというときに迷わないでしょう。
この記事では、代表的な着物の帯の種類や、種類別の帯の結び方を解説するとともに、着物と帯の適切な組み合わせについても紹介します。着物初心者の方や、これから着物を着る予定がある方などは、ぜひ参考にしてください。
■着物の帯はおもに4種類
着物の帯には、大きく分けて「丸帯(まるおび)」・「袋帯(ふくろおび)」・「名古屋帯(なごやおび)」・「半幅帯(はんはばおび)」の4種類があります。とはいえ、名称を聞いただけでは、どのような形・特徴の帯なのかイメージしにくいかもしれません。
ここでは、それぞれ帯の特徴などを画像とともに紹介します。
◇丸帯
江戸時代中期から使われるようになったとされる丸帯は、最も格が高い帯です。そのため、次のようにハレの場での着物に合わせます。
白無垢(しろむく) |
花嫁が結婚式のみで着用できる着物です。刺繍を含め、すべてが白色で仕立てられています。 |
色打掛(いろうちかけ) |
花嫁が結婚式や披露宴で着用する着物です。白無垢とは対照的に、鮮やかな色・華やかな刺繍が施されています。 |
黒留袖(くろとめそで) |
新郎新婦の母親や仲人婦人が、結婚式・披露宴などで着用する着物です。既婚女性が着用する着物のなかで、最も格が高いとなっており、黒色の生地に五つ紋が入っています。 |
丸帯は帯の幅が広いため、幅を半分に折って仕立てます。表地と裏地の両面とも柄が見える仕立て方なので、どのような結び方をしても、きちんと柄が出るのが特徴です。金糸や銀糸が用いられているものも多く、豪華な印象を与えるでしょう。
丸帯の具体的なサイズの目安は、次のとおりです。
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仕立て前:幅約60~64cm×長さ約400~450cm
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仕立て後:幅約30~32cm×長さ約400~450cm
◇袋帯
丸帯に次いで格の高い帯が、袋帯です。表地と裏地の生地を袋状(筒状)に縫い合わせて仕立てることから、袋帯という名前が付きました。袋帯は、先述した黒留袖のほか、次のような着物に合わせます。
色留袖(いろとめそで) |
黒留袖は、黒色の生地で既婚女性が着用する着物なのに対し、色留袖は、黒色以外の生地で、既婚・未婚を問わず着用できる着物です。上半身は無地で、裾のみに柄が入っています。 |
色無地(いろむじ) |
黒色以外の一色で染められた着物です。名前のとおり、柄はありませんが、生地自体に「地紋」が織り込まれていることがあります。 |
訪問着(ほうもんぎ) |
フォーマルシーンからカジュアルシーンまで、幅広く着用できる着物です。色留袖と異なり、訪問着は裾だけでなく上半身にも柄が入っています。 |
また、成人式で着用する振袖にも、袋帯を合わせるケースが多いでしょう。
袋帯のサイズの目安は、次のとおりです。
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幅約30cm×長さ約400~450cm
仕立て後のサイズは丸帯と変わりませんが、重量のある丸帯と比べ、裏地に無地の生地を使用している袋帯は軽いのが特徴です。
◇名古屋帯
名古屋帯は、袋帯に次いで格が高いものの、カジュアルシーンで用いられることが多い帯です。大正時代に名古屋で考案された帯で、仕立て前の幅が九寸(約34cm)であることにちなみ、「九寸帯」や「九寸名古屋帯」と呼ばれる場合もあります。
名古屋帯を合わせることが多い着物は、次のとおりです。
付け下げ(つけさげ) |
左肩にワンポイントの柄が入っている着物です。合わせる帯によって、フォーマル・カジュアルな場面を使い分けられます。 |
小紋(こもん) |
色無地や付け下げより格が低く、普段着・おしゃれ着として着用する着物です。生地全体に柄が入っており、柄の雰囲気によって着こなしを楽しめます。 |
紬(つむぎ) |
紬糸を使用した、織りの着物です。小紋と同様に、普段着・おしゃれ着として着用します。 |
御召(おめし) |
御召縮緬(おめしちりめん)の略で、織りの着物のなかでは最も格が高いものです。無地のものから柄物まで、幅広いバリエーションがあります。 |
また、先述した色無地の着物のうち、地紋が付いていないものにも名古屋帯を合わせられます。紋なしの色無地に名古屋帯を締め、小紋と同等の格にあえて落とすことで、カジュアルシーンに適した着こなしが可能です。
名古屋帯のサイズの目安は、次のとおりです。
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幅約30cm×長さ約330~360cm
◇半幅帯
名古屋帯よりもさらにカジュアルな帯が、半幅帯です。小紋や紬のほか、浴衣に合わせるケースもあります。素材によって適したシーンが異なりますが、どのような素材でもフォーマルシーンには適していません。
半幅帯は、「小袋帯(こぶくろおび)」と「単衣帯(ひとえおび)」に分けられます。小袋帯は、2枚の生地の端が縫い合わさり、袋状になっている半幅帯です。一方の単衣帯は、1枚の生地から仕立てられている半幅帯で、通常、浴衣には単衣帯を締めます。
半幅帯のサイズの目安は、次のとおりです。
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幅約15cm×長さ約330~360cm
ほかの帯と比べて薄手で幅が狭く、帯を結びやすいため、結び方をアレンジして楽しめるのが特徴といえるでしょう。
■【種類別】着物の帯の結び方
着物の帯の代表的な結び方には、「一重太鼓(いちじゅうだいこ)」と「二重太鼓(にじゅうだいこ)」があります。
帯を締めた際の背中の膨らんだ部分を「お太鼓」と呼び、お太鼓が一重になる結び方が一重太鼓、二重になる結び方が二重太鼓です。二重太鼓は、一重太鼓よりも格が高いとされています。
ここでは、先述した丸帯・袋帯・半幅帯・名古屋帯について、一重太鼓と二重太鼓のどちらを用いることが多いのかなど、一般的な結び方を見てみましょう。
◇丸帯
丸帯は格が高い帯ですが、二重太鼓ではなく一重太鼓で結ぶことが多いのが特徴です。
その理由として、丸帯は厚みがあり、二重太鼓にしにくい点が挙げられます。また、昔の丸帯の場合は、二重太鼓で結ぶには長さが足りないものもあるでしょう。
丸帯は、表面にも裏面にも豪華な柄が出るよう仕立てられているため、一重太鼓で結んでも華やかさが劣る心配はありません。
◇袋帯
袋帯は、二重太鼓を用いるのが一般的です。特に、お祝いの席では、「うれしいことが重なるように」「重ねがさねおめでとうございます」といった意味を込めて、袋帯を二重太鼓に結ぶケースが多いでしょう。
なお、成人式の振袖に袋帯を合わせる場合は、次のような変わり結びをすることもあります。
文庫結び |
左右の羽根を垂らすことで、結び目がリボンのように見えます。江戸時代から続く伝統的な結び方です。 |
ふくら雀結び |
お太鼓を寒い時期に膨らむ雀(=ふくら雀)に見立てた結び方です。ふくら雀が羽を広げたような形になります。 |
立て矢結び |
斜めにあしらう大きな蝶結びが矢のようであることから、立て矢結びと呼ばれます。立体的で華やかさがありつつも、すっきりとまとまった印象を与えるでしょう。 |
◇名古屋帯
名古屋帯は、一般的な丸帯や袋帯と比べて長さが短いため、基本は一重太鼓で結ぶか、「銀座結び」のような変わり結びをします。
銀座結びとは、帯をねじって簡単に結べる方法で、小紋や紬といった普段着用の着物で用います。見た目は「角出し結び」と非常に似ており、背中の部分のふんわりとした膨らみのなかから、左右にツノのような手先を出します。
◇半幅帯
先述のとおり、半幅帯はさまざまな結び方ができる帯です。代表的な結び方には、文庫結びのほか、次のようなものがあります。
リボン結び |
文庫結びの羽根の部分をアレンジした結び方です。文庫結びよりもボリュームが出て、より可愛らしい印象になります。 |
みやこ結び |
リボンの結び目を隠すように、羽根の上にタレが被さる結び方です。「リボン返し」と呼ばれることもあります。 |
かるた結び |
帯が、かるたのように平らになる結び方です。背中の膨らみがないため、長時間椅子に座るような場面で活躍します。 |
貝の口結び |
帯が貝のような見た目になる結び方です。男性の着物に合わせる場合も多く、「男結び」と呼ばれることがあるでしょう。 |
ほかにもたくさんの結び方があるため、着物の雰囲気やその日の気分などで使い分けるとよいでしょう。
■着物と帯はどのように合わせたら良い?
着物と帯の合わせ方を考える際には、次の点がポイントとなります。
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フォーマルシーン:染めの着物に織りの帯を合わせる
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カジュアルシーン:織りの着物に染めの帯を合わせる
染め・織りの着物、染め・織りの帯は、それぞれ以下のとおりです。
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染めの着物:留袖・振袖・訪問着・色無地・付け下げ・小紋
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織りの着物:紬・木綿など
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染めの帯:塩瀬・縮緬・紬・ろうけつ染め・しぼりなど
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織りの帯:唐織・佐賀錦・博多織など
ここでは、フォーマルシーンを想定し、代表的な染めの着物と織りの帯の組み合わせについて解説します。
◇留袖×織りの袋帯
黒留袖は既婚女性の第一礼装、色留袖は既婚・未婚女性の第一礼装です。どちらも結婚式の列席で装うほか、色留袖は叙勲式や園遊会などでも装います。なお、色留袖は紋が多いほど格が高くなり、五つ紋付きの場合は黒留袖と同等の格になります。
これらの留袖に合わせるなら、次のような織りの袋帯が適切です。
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格調が高い色柄のもの:文様に金糸や銀糸を織り込んだものや、有職模様・正倉院模様・吉祥模様など
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華やかな色柄のもの:大きな柄を配したものや、金糸・銀糸をはじめ多彩な色糸で文様を織り出したもの
◇振袖×織りの袋帯
振袖は、未婚女性の第一礼装です。紋がなくても礼装とされ、成人式や結婚式の列席、パーティー、謝恩会などで晴れ着として装います。絵羽模様や袖の振りが長い点が特徴です。
振袖に合わせる帯は、留袖と同様に考えてよいでしょう。格調が高い色柄の織りの袋帯や、華やかな色柄の織りの袋帯を合わせます。
◇訪問着×織りの名古屋帯
訪問着は、既婚・未婚女性の礼装・準礼装です。結婚式や式典の列席、パーティー、お見合い、結納、格式高いお茶会、お祝いごとなどの際に装います。
訪問着は紋がなくても準礼装に位置付けられますが、絵羽模様で紋を付けると格が上がります。一つ紋を付けておくと、着こなしの幅が広がるでしょう。
訪問着に合わせる帯は、織りの袋帯や織りの名古屋帯です。織りの袋帯の場合は、格調が高い色柄のものや、華やかな色柄のもののほか、幾何学模様・エスニック模様・抽象模様などのモダンなデザインのものも合わせられます。一方、織りの名古屋帯の場合は、格調高い色柄のものを選びましょう。
■まとめ
着物の帯の代表的な種類は、次のとおりです。
おもな特徴 |
おもな結び方 |
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丸帯 |
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袋帯 |
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名古屋帯 |
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半幅帯 |
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また、フォーマルシーンかカジュアルシーンかによって、着物と帯の適切な組み合わせは異なります。
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