着物の袖(そで)はどこからどこまで?振袖、留袖などの種類や違いとは?
着物の袖がどの部位を指しているのかは、何となくイメージできますが、洋服の袖との明確な違いはわかりにくいでしょう。着物の袖は、長さや形により特徴があり、着用できる人も限定されています。ぜひこの機会に着物の袖の範囲、形状の種類・特徴など知って美しい着こなしができるようにしましょう。
■着物の袖(そで)とは
着物の袖とは、着用したときに腕を覆う部分を指します。具体的には、身体の肩先付近から手首付近までの部位となり、右手側は右袖、左手側は左袖といいます。袖そのものは、洋服の部位と大きく変わるものではありませんが、一般的に着物は洋服よりも袖部分が大きく作られているのが特徴です。
また、着物の袖を袂(たもと)と表現することもありますが、袂(たもと)は袖部分の下側を指しています。例えば、振袖など袖の長さがある着物において「袂(たもと)が触れる」と言うことがあるのはそのためです。
たっぷりとボリュームのある着物の袖は、柔らかい雰囲気を感じさせるポイントであり、魅力の一つでもあります。長い袖があることで、普段よりも所作を気にしたり、ゆったりと動いたりする必要がありますので、着こなしにも重要な役割を占めているのです。
■着物の袖の部位の呼び名
着物の袖は部位ごとに、以下のような呼び名があります。
・袖幅と裄(ゆき)、袖丈
「袖幅」とは、着物の袖の横幅を表します。横幅とは、袖付けから袖口までの幅となり、この袖幅と肩幅を合わせた部分を「裄(ゆき)」と呼びます。自分の体形に合う、または目的に合う着物を選ぶときには裄の寸法を測ることがポイントです。
また、「袖丈」は、袖の上下の長さを表します。袖が長いほど格式が高く、フォーマルな場所で着用する着物となります。例えば、成人式で着用される振袖などが、袖の長い着物として挙げられます。
・袖付けと袖山(そでやま)
「袖付け」は袖の上の部位となり、身頃と縫い合わせてある部分を指します。着物の袖は、身頃に縫い合わせてある「袖付け」と、縫い合わせていない「振り」と呼ばれる部分があり、振りがあることによって、大きな袖でも自由に腕を動かすことができる仕組みとなっています。
「袖山(そでやま)」は袖の一番上、折山がある部分を指します。肩の部分である肩山から袖山まで、折山を一直線にピンと伸ばし中心を合わせて着付けをすることが、美しく着物を着こなすポイントとなります。
■着物の袖の種類
着物の袖には、長さ、形状により種類があります。袖の長さは未婚、既婚、着用する場などによっても大きく異なります。
・振袖
袖丈が長い着物として、本振袖(大振袖)、中振袖、小振袖の3つが挙げられます。これらは、未婚の女性の第一礼装、結婚式や成人式、卒業式などでよく着られています。
<本振袖>
長さの目安は115cm以上となりますので、くるぶし付近までの長さです。そのため、振袖のなかでは最も長い袖となり、格式が高く、花嫁の婚礼衣装や成人式などで着用されます。
<中振袖>
長さの目安は100㎝ほどとなります。本振袖の次に格式が高く、結婚式の参列、成人式などで着用されることが多いでしょう。
<小振袖>
長さの目安は80cmほどで、振袖の中では最も短い袖となります。卒業式などで着用されることが多く、ほかの振袖よりもカジュアルな着こなしができるため、袴を着用して足元に草履ではなくブーツなどを合わせる着こなしもよく見られます。
・留袖
留袖は、振袖よりも袖丈が短い着物です。訪問着や小紋(こもん)など、一般的によく目にする袖の着物です。しかし、留袖の中でも、結婚式の親族が着用する紋付の黒留袖は、既婚女性の第一礼装としては最も格式の高い着物とされています。
■着物の袖の形
着物には、袖の長さのほかにも形の種類があります。さまざまな袖の形を見ていきましょう。
・小袖(こそで)
小袖は着物のもともとの原型とされていて、袖幅は少し狭く袖丈も短めなのが特徴です。平安時代には、公家装束(くげしょうぞく:朝廷に仕える人の服装)の下着として着用されており、十二単の下に重ねていたと伝わっています。後の鎌倉時代では表着として用いられるようになり、身分を問わず広がりました。また、江戸時代の後期には、袖の大きな振袖なども作られるようになり、小袖の呼び名はあまり使われなくなっています。
・元禄袖(げんろくそで)
元禄袖は、袖の角部分に大きな丸みがあるのが特徴で、元禄時代にできたことから呼び名が付いています。小袖から袖の大きさは大きくなり、振りが付けられ、身八ツ口(脇のあき部分)ができ、着物の着こなしも変化してきました。主に女性、子供用の着物として用いられています。
・船底袖(ふなぞこそで)
船底袖は、袖下が船底の形に似ていることから名付けられています。袖口に向かってカーブを描きながら徐々に細くなるのが特徴です。袖口が狭く動きやすくなるため、昔は子供用として広く用いられていましたが、現在は作業着などの上着にも船底袖が使われています。
・薙刀袖(なぎなたそで)
薙刀袖は、袖口に向かって徐々に細くなりますが、船底袖とは異なりカーブが少ない形状になるのが特徴です。鋭い形状が薙刀に似ていることから名付けられたとされています。こちらも普段着の着物などに用いられます。
・平口袖(ひらくちそで)
平口袖は、袖口が広く開いている半纏(はんてん)の袖をイメージするとわかりやすいでしょう。また、着物の下に着用する長襦袢(ながじゅばん)でも使われています。長襦袢の場合は、袖丈の長さ分がすべて開いてしまうため、途中で留め結びをするのが一般的です。
■まとめ
今回は、着物の袖の部位の概要や長さ、形の種類、特徴などをご紹介しました。袖の長さや形によって、着物を一層華やかに演出できる重要なポイントです。フォーマルな場での着物、不普段着としての着物と目的に合わせて、ふさわしい着物の着こなしを楽しみましょう。
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