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着物大事典

きものコラム

伊勢にないもの・あるもの

伊勢ならではの風習など、知っていると旅が楽しくなる情報をお教えいたします。伊勢といえば伊勢神宮。実は神社でよく見かけるものが伊勢神宮にはないのです。

・注連縄

伊勢神宮では神聖な場所を示すものとして「注連縄」ではなく「榊」を用います。榊は「堺になる木」という意味もあり、鳥居やお宮の垣根に飾られています。

・狛犬

神社の入り口両端によく立っていますが、伊勢神宮では見かけません。狛犬は中国から伝わり、魔除けの意味から神社やお寺に置かれるようになりましたが、それは江戸時代に入ってからのことでした。伊勢神宮は江戸時代以前からあるので古くからの歴史を守り、狛犬は置いていません。

・おみくじ

神社に行ったら楽しみなのひとつがおみくじ。ついつい自分の運勢を占いたくなりますよね。おみくじも狛犬同様、全国で普及した頃よりずっと前から伊勢神宮は存在しました。ではなぜ取り入れないのでしょうか。理由のひとつは伊勢神宮へお参りしに行くこと自体が吉日であると言われています。昔はおかげ参りと言って伊勢神宮でのお参りに憧れ、歩いて長旅の末やっとお参りができるというものでした。確かに日本の総氏神・天照大御神様に日々の感謝とこれからのご多幸をお祈りできるのはありがたいことですよね。他には古くの歴史、私幣禁断からきています。天照大御神様は皇室の先祖神で、昔は皇室の方しかお参りができない場所でした。個人のお願いができないので、個人を占うおみくじも置かれていないということです。

伊勢でおみくじを引きたい方はおかげ横丁のおかげ犬みくじをおススメします。陶器製のおかげ犬の中にはおみくじが入っています。ユニークで可愛いおみくじです。

・鈴

お参りをする時に上からぶら下がった鈴を鳴らしますよね。こちらも伊勢神宮では見当たりません。鈴に関しても、伊勢神宮創建の方が古かったからというのが理由のようです。多くの神社がしていることでも、伊勢神宮は昔ながらのスタイルを保ち続けているということです。開運鈴守という鈴がついたお守りはあります。開運祈願のお守りで内宮は巾着型、外宮は勾玉型です。外宮にある勾玉池を模して勾玉型になっています。こちらは全国でも珍しいと評判なので、是非内宮との違いも含めてご覧ください。

 

●伊勢ならではの風習

・伊勢の民家では一年中玄関先に注連縄があります。一般的には年末に飾り、正月飾りと共に外して神社でお焚きあげしますがなぜでしょうか。これには古くからの伝説が関係しているようです。その昔、伊勢の地を旅していた須佐之男命が夕暮れに宿泊するところがなく困っていたところ、蘇民将来という男が一夜の宿を貸し、貧しいながらも精一杯もてなしました。須佐之男命はこれに喜び、恩として「蘇民将来の子孫と書いて茅の輪を門口にかけておけば子孫代々病を免れる」と言い残しました。以来、蘇民家は疫病を免れ代々栄えました。この故事にあやかり、伊勢の人々は「蘇民将来子孫家門」の札を注連縄につけて一年中門口に飾るようになったといわれています。伊勢神宮周辺ではお店でも注連縄を飾っているところが多いので覗いてみてください。

・伊勢神宮大晦日の篝火でマイ餅焼き網持参

伊勢神宮では大晦日から暖を取るための篝火が焚かれます。地元ではこの火でお餅を焼いていただくと一年中風邪を引かずに過ごせるといわれています。地元の人たちは長い棒に網がついた餅焼き道具を持っていますが、実はこれお手製なんです。手作りなので色んな長さ、形です。年越し参りに行かれる方はご用意してみてはいかがでしょうか。

 

今回は伊勢にあるもの、ないものをご紹介いたしました。何気なく観光するより、知っているとさらに楽しく過ごせますよ。