これから卒業式を迎える皆さんの素敵な思い出を作るために
●袴の歴史
最近では大学の卒業式では女性は袴が一般的ですが、実は古墳時代から、袴が存在していたことが確認されています。当時は男性の衣装として使用されていて、平安時代には貴族階級が礼装として着るようになりました。その後、江戸時代までは正式な場で着用するものとして扱われていました。
女性が袴を着るようになったのは明治時代からです。明治時代は男性用の袴を、そのまま女性が履いていました。男性用の袴はズボンのように股が割れており、足が大きく開けるようになっています。これは馬に乗る際などに必要で、のちに女性用の袴としてスカートタイプのものが作られました。
欧米文化が日本に広がり始め、畳に座る生活から椅子に座る機会が増えてきた時代、女性は積極的に外に出歩くようになりました。
裾さばきが気にならない簡単に歩ける服装を求めるようになり、袴を着るようになりました。明治時代から大正時代にかけて、学校の女性教員が着るようになり、それから昭和の始め頃まで袴は女学生の制服となりました。袴に編み上げブーツ、洋風の髪型に大きなリボンと日本文化と欧米文化が混じったファッションが大流行したそうです。
女学生の制服として考案された女袴は、宮中の女官服に由来しており、学問の場にふさわしいきちんとした身なりとして受け入れられました。従来の着物に帯というスタイルに比べて、動きやすいという機能面はもちろん、姿勢が綺麗に見え、優美さ礼節を兼ね備えているということで袴が制服になったきっかけのようです。
●卒業式に袴を着る理由
昭和に入ってから漫画や宝塚歌劇団の影響で卒業式に袴が定着し始めました。制服だったこともあり学業との結びつきが強いので定着しやすかったのかと思われます。
袴の定番の模様といえば矢絣です。この矢絣は「矢のようにまっすぐ一直線に突き進め」という意味が込められていて、旅立ちの日のふさわしいとされています。袴に合わせる着物には、特に決まりごとはないといわれておりますが、未婚女性の第一礼装である振袖と袴を合わせることは、その由来や経緯から見てもふさわしい組み合わせと言えます。
袖丈が長いぶん柄の入った面積が多く、豪華な印象になる中振袖も、コンパクトな袖が軽やかで、若々しく愛らしい印象になる小振袖も、なりたい雰囲気に合わせても楽しいです。成人式用に振袖を購入した人は、それを活かしたコーディネートを考えてみるのもおススメです。
●草履またはブーツどちらを選ぶべきか
草履の場合のメリットは、脱ぎ履きのしやすさにあります。また、コーディネートの側面から見ると、どんな着物や袴に合わせても違和感なくマッチし、上品な印象を与えることができます。着物の色柄や、髪飾りといった小物の色と合わせ、トータルコーディネートもこだわることができます。
ブーツの場合のメリットは、ヒールがあるぶん脚長に見えスタイルをよく見せることができます。また、大正時代の女学生のようなレトロな雰囲気なれるということで袴姿にブーツを合わせる人も多いようです。ブーツは普段から履きなれているものなので歩きやすいという点や、雨や雪の日に履いても水が染みにくい、靴下やタイツで防寒対策がしやすいという点もあります。
一方でブーツのデメリットは脱ぎ履きに手間が掛かったり、紐がほどけると結び直さなくてはならないということもあります。草履のデメリットとしては、普段履きなれないものなので、歩きにくかったり、足が痛くなったりということがあります。また、雨や雪など天候が悪い日に履くと、足が濡れたり冷えたりしやすいので注意が必要です。
袴を着た時の注意点
●椅子に座るとき
椅子に座るときは、シワが寄らないように浅く腰掛けるようにします。
はかまの両側の袖は合わせて膝の上に折り畳むようにして置きます。
そして背筋を伸ばして座りましょう。
●車に乗るとき
車に乗るときは、袖を左腕にかけるような形で持ったあと、お尻から座席へ入るようにします。座席に腰掛けたら身体を回転させますが、その時に帯が潰れないように注意して下さい。
立ち上がる時は裾を踏んでしまわないようにしましょう。
●階段、エスカレーターの昇り降り
袴姿だと、裾を踏んでしまいがちなので、昇るときは、はかまの前側を少し持ち上げ、降りるときは、袴の後ろ側を少し持ち上げるようにしましょう。
裾がエスカレーターの隙間に挟まってしまわないように注意してください。
●トイレに行くとき
スカート状になっているので、ロングスカートを着ている要領で利用出来ます。利用するときは、袖を帯とはかまの間に挟むようにします。終わったら袖を元に戻して、はかまの前後をきちんと確認して下さい。手を洗うときも袖口を濡らさないように注意しましょう。トイレは洋式がおススメです!
●写真を撮るとき
袴姿は姿勢を意識することでいつもより凛として大人びた印象になります。背筋はぴんと伸ばし、あごを引いて胸を張りつつ、腹筋に少し力を入れると自然に見えます。足元が草履の場合は内股を意識し、足の親指同士をくっつけるような形が自然です。ブーツの場合はかかとをつけ片方の足をほんの少し後ろに引くとキレイに見えます。この基本の立ち方をマスターしておくと写真映りが綺麗に見えます。
●腕を動かすとき
電車内でつり革につかまったり、友達に手を振ったりと、腕を上げる動作をする時は、袖から襦袢が見えてしまうのを防ぐためちょっと注意をしましょう。和装の場合は腕を見せないのが上品に見せるコツですが、着物の袖は開いているので、普段のように洋服感覚で腕を上げると、着物の袖口から腕が大きく出てしまいます。
腕を上げる動作をする時は、片手で袖口を軽く押さえて、手先だけが出るようにすることが所作を美しく見せるコツです。
●最後に
袴には色々な歴史がありますが、一生に何度も着ない袴なので後でがっかりしないためにも着物選びから所作までこれらのことを気にしてみてください。
この記事を最後まで読んで下さった方々、素敵な卒業式を迎えられるよう願っています。
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