蟹の恩返し?蟹満寺と八重の桜で有名な二本松薩摩藩邸跡をご紹介します
京都名所特集と銘打ってご紹介するのは、京都にある神社仏閣の特徴や歴史についてです。細かくご紹介して、観光などの際に役立てていただきたいと考えております。第13弾の今回は蟹満寺(かにまんじ)と二本松薩摩藩邸跡(にほんまつさつまはんていあと)です。
●蟹満寺
京都市の南、奈良県に近い木津川市に蟹満寺という一風変わった名前の寺があります。この寺には、本堂などのあちこちにカニの模様の彫刻やカニの像が飾られているのです。賽銭箱やお守り、燈籠にもカニが描かれています。また、毎年四月にはカニ料理店や水産業者らが集まって、毛ガニやタラバガニを奉納し、サワガニを手水鉢に放流してカニに感謝するカニ供養が行われます。カニは水陸両生、脱皮して成長することから古来より霊性がある生き物として信仰されていたといいます。
蟹満寺のいわれは、今昔物語に創建の縁起として描かれています。今は昔、山城の国に観音菩薩を信仰する慈悲深い娘が住んでいました。あるとき、カニを捕まえて食べようとするものからカニを買い取って救ってやりました。ほどなくして、娘の父親はへビがカエルを食べようとしているのを見てカエルを救うためにカエルを放してやれば娘と結婚させると約束してしまいます。そこでヘビはカエルを放してやり、娘に求婚しにやってくるのです。そのとき、かつて娘に助けられたカニがたくさんの小さなサワガニをつれてあらわれ、へビと格闘して見事討ち倒し、娘を助けて恩返しをしました。そこで娘の一家はその地にお堂を建てて死んだヘビとたくさんのカニを祀って供養したといいます。このお堂が蟹満寺の始まりとされているのです。この蟹の恩返し伝承が伝わるので、本堂の脇には、ハサミを突き出したカニが体をうねらせた大蛇と格闘している姿を描いた大きな額が飾られており、人目を集めています。
このカニの恩返しの伝承は伝わっているのですが、実際に創建のくわしい由来や年代はわかっていません。寺のある地名は、かばたというが、古くは「カムハタ」「カニハタ」といい、「紙幡寺」といっていたのがなまって「蟹満寺」となったという説があります。
カニだらけの本堂だが、御本尊には金銅仏釈迦如来像を祀っていて、これは七世紀半ばころに作られた貴重な仏像で、国宝に指定されています。カニの彫刻や絵だけでなく、歴史ある金銅仏釈迦如来像も見どころの一つです。蟹を祀る珍しい寺院の蟹満寺をぜひ訪れてみてください。
●二本松薩摩藩邸跡
打倒徳川幕府を掲げる薩摩藩は、現在の京都の繁華街・四条河原町にある大丸百貨店近くの錦小路と伏見に藩邸を持っていましたが、三つ目の藩邸として今出川通の二本松にも薩摩藩邸を建てました。1864年の禁門の変で錦小路の薩摩藩邸は焼失してしまったので、それ以後はこの二本松薩摩藩邸が薩摩藩の本拠地となりました。1866年、坂本龍馬の働きによって長州藩との間に薩長同盟が結ばれたのもこの薩摩藩邸です。
鳥羽伏見の戦いで幕府軍が敗れると、会津藩士の山本覚馬は捕えられてこの薩摩藩邸に幽閉されました。しかし、薩摩藩は山本覚馬の優秀さを知っていたので、決して粗末に扱いませんでした。幽閉中に覚馬はこの藩邸で新政府に宛てて管見という政治、経済、教育に関する建白書を書き薩摩藩主に提出。これを読んで覚馬の優れた先見性に西郷隆盛はますます敬服したといいます。そこで明治元年に幽閉を解いて病院に移し、翌年覚馬を釈放しただけでなく、維新後はこの藩邸を覚馬に譲ったのです。
その後、新島襄(にいじまじょう)がキリスト教の学校をつくろうとしていることを知り、約5000坪の広大なこの旧薩摩藩邸を彼に提供しました。
それによって新島襄は1875年に同志社英学校を設立することができたのです。これが現在の同志社大学今出川キャンパスです。「同志社」と命名したのも山本覚馬で 、文字通り「志を同じくする者の結社」という意味です。
新島襄はまだ鎖国をしていた1864年に国禁を犯してアメリカに渡り、アメリカンボードというキリスト教の伝道組織の役員であるハーディー夫妻の援助でボストンのフィリップス・アカデミーに入学。その後も大学で学び1875年に帰国。山本覚馬と知り合った。そしてこの年の一月には早くも同志社英学校を開校するのである。覚馬の妹八重とは同年 10月に婚約し、翌1876年1月に結婚している。もちろん八重も夫の同志社英学校設立に尽力しました。この活躍は後にNHKの朝ドラの題材となって多くの人に知られています。
現在、同志社大学の西門前には、薩摩藩邸跡の碑と説明書きの札が建てられています。同志社大学を設立したのは新島襄ですが、山本覚馬の助けと藩邸の提供がなければ現在の同志社はなかったかもしれません。
いかがでしょうか。今回は蟹の恩返し物語が伝わる蟹満寺と同志社大学創立の物語の始まりともいえる二本松薩摩藩邸跡をご紹介しました。聖地巡礼スポットとしてぜひ足を運んでみて下さい。