着物で正座する際の美しい座り方|しびれや着崩れを防ぐポイントとは
着物で正座することに慣れていない場合、きれいに座れるか不安に思う方もいるかもしれません。また、正座による足への負担や、着物の着崩れも気になるポイントです。
しかし、過度に心配する必要はありません。着物で正座するときや立つときの流れを把握しておけば、着物に慣れていない方でも、美しい立ち居振る舞いを行なうことができます。
この記事では、着物で正座する際の美しい座り方や、足をしびれにくくするためのポイントを解説します。また、着物の着崩れを防ぐ方法や着崩れた場合の整え方、正座以外の座り方も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
■着物で正座をする際の美しい座り方は?
着物で正座をする際には、座るときと立つときの両方に気を配ることが大切です。
ここでは、着物を着て正座をするシーンの座り方を、正座時と立ち上がり時の2つの動作に分けて説明します。
◇着物で正座する際の流れ
着物姿で正座する場合の流れは、以下のとおりです。
- 右足を半歩程度うしろに引く
- 右手を使って上前(うわまえ)を少し上に引っ張る
- 左手を使って上前の太もも部分を押さえながら腰を落とす
- 右手を使って上前の裾を膝の下に入れながら膝をつく
- 両膝をやや上げて、裾の乱れを右手で直す
- 座ったあとは両袖を膝の上に乗せる
上記の流れの2つ目に出てくる上前とは、着物を着たときに上に重なる部分(外側)のことを指します。左衿を含む、着物の左部分の全体と考えると、わかりやすいでしょう。
◇正座から立つ際の流れ
着物で正座している姿勢から立ち上がる際の動きも把握しておきましょう。
立ち上がりの流れは、以下のとおりです。
- 両足のつま先を立ててから、かかとにお尻を置く
- 右手を使って着物の上前の太もも部分を押さえる
- 片足をやや前にずらしてそのまま立ち上がる
- 立ち上がったら両足をそろえる
着物を着て、正座した状態から立ち上がる動きを行なううえで大切なのは、身体の軸を意識することです。軸がぶれて左右に揺れてしまうと、きれいな動きになりません。まっすぐな立ち上がりができるよう、何度か練習してみましょう。
■着物で正座する場合にしびれにくくするポイント
着物着用時の正座に慣れていない場合、足のしびれを辛く感じることもあるかもしれません。
ここでは、正座の際に足をしびれにくくするためのポイントをいくつか紹介します。
◇基本の姿勢を保つ
正座をしているときにお尻のほうに体重がかかると、足の甲や足首が圧迫されて、しびれやすくなります。
足の甲や足首が圧迫されるのを防ぐために、基本の姿勢を保ちましょう。正座時の基本の姿勢とは、背筋を伸ばした状態のことです。
背筋を伸ばして重心を前にすることで、足に負担がかかりにくくなります。見た目も美しい姿勢であるため、正座の際は背筋を伸ばし、前方に重心をかけて座りましょう。
また、かかとの上ではなく足の間にお尻を収めることも大切です。左右の親指を重ねて、八の字にした足の間にお尻を収めれば、しびれを軽減できます。
◇普段からストレッチしておく
太ももの筋肉や足首の関節の柔軟性が高いと、正座の姿勢を維持しやすいといえます。そのため、普段の生活でストレッチを習慣化しておくのがおすすめです。
柔軟性の低下は、ケガのリスクを高めるといっても過言ではありません。日常的にストレッチをしておくことで、着物を着て正座したときだけでなく、生活全般で身体に負担がかかりにくくなります。
◇こまめに休憩する
正座のしびれに関係しているのは、血流の流れです。
正座をすると、膝下部分の血管が圧迫されて血流の流れが悪くなり、末梢神経の機能に欠かせない酸素が十分に行き届きません。酸素の不足状態が続いた結果、末梢神経に問題が発生し異常電流が流れ始めて、足のしびれを感じるのです。
正座で足がしびれないようにするためには、こまめに休憩して血流を良くすることが重要といえます。
具体的には、重ねている足の親指の上下を入れ替えたり、身体の重心を変えたりするなどの方法が効果的です。着物を着ていれば、足の動きが目立ちにくいため、しびれの対策をさりげなくできるでしょう。
◇正座椅子を利用する
長時間の正座をできるだけ楽にするには、正座椅子が役立ちます。正座椅子とは、お尻と足の間に入れられるクッション付きの椅子のことです。
正座椅子を使用すると、体重を椅子部分に分散できるため、正座時の足の圧迫を抑えてしびれを軽減できます。
コンパクトに折りたたみができる正座椅子もあるので、会食やお茶会などの会場に持っていくのもよいでしょう。また、あらかじめ正座椅子の有無について、会場に確認しておくと安心です。
■着物の着崩れ防止策は?
着物を着ているときの心配事の一つに、着崩れが挙げられます。着崩れを防ぐ対策として効果的なポイントは、以下の2点です。
◇着付け方を工夫する
着付けがきちんと行なえていない場合、着崩れしやすいといえます。
正座する予定がある場合は、通常時よりも上前を2~3cm程度深めに合わせておくとよいでしょう。上前を深く合わせて着付けることで、正座時の着崩れを軽減できます。
◇動作全般に気を配る
着崩れしにくい着付けを行なったうえで、着物を着ているときの動作に気を配ることも大切です。着物の着用時は、正座をはじめ、歩き方や腕の上げ方など動作全般に注意する必要があります。
着物着用時の動作のポイントは、できるだけ動作を小さくし、激しい動きをしないようにすることです。これらのポイントを意識して動くことで、着崩れを防ぎながら安心して過ごせます。
■着物で正座した際の着崩れを直す方法
どれだけ気を付けていても、着物が着崩れしてしまうことがあるかもしれません。
ここでは、着物で正座した際の着崩れを直す方法を部位ごとに紹介します。
◇裾
着物で立ち座りを何度も繰り返した場合、裾が開き長くなってしまうことがあります。着崩れした際は、以下のように裾を直すとよいでしょう。
- 右手で上前を持ち、元の位置に戻す
- 戻したときに余った生地は、おはしょりの下にある腰ひもに挟む
おはしょりとは、腰周りにある、着物の布地を折った山を帯の下側に出している部分のことを指します。
◇衿もと
動きによっては、着物の衿もとがはだけたり、左右でずれたりすることがあります。
衿もとの着崩れを直す手順は、以下のとおりです。
- 左手を左側の身八つ口に入れる
- 右側の衿先をつまんで、身八つ口から引っ張り整える
- 左側の衿は、右わきのおはしょりを上に引っ張って整える
身八つ口とは、帯と腕の間にある、縦に空いている部分のことを指します。
◇帯
帯の位置が下がると、着物全体のバランスが崩れて見えてしまう傾向があります。帯が下がってきてしまった場合は、以下のように位置を直しましょう。
- 両手を帯の下に入れて帯を持ち上げる
- 両手を使って上から帯を持ち直す
- 元あった位置に帯を引っ張って整える
帯のゆるみが気になるときは、帯の下にタオルを挟んで厚みを作り、すき間を埋めてください。
■着物では正座以外の座り方にも要注意
着物では、正座以外の座り方にも注意して振る舞う必要があります。
最後に、椅子に座るときと、車のシートに座るときの正しい座り方を紹介します。
◇椅子に座るとき
着物で椅子に座る場合は、以下の3点を意識することが大切です。
- 浅く座る
- 背もたれがある場合は寄りかからない
- 上前を上に引っ張ってから座る
着物で椅子に深く座わると、椅子と布地が接する面が広くなり、着崩れのリスクが高まります。また、背もたれに寄りかかると、帯の結びがつぶれる恐れがあるため注意が必要です。
上前をおはしょりの位置まで引き上げて座ることで着崩れを防げるため、ぜひ実践してみてください。
◇車のシートに座るとき
着物で車のシートに座るときは、まずシートの横に背を向けて立ちます。足からではなく、お尻のほうから車に乗るように座るのがポイントです。
車のシートに腰を下ろしたら、両足を一緒に回転させるようにして車に入れます。通常の椅子に座る際と同様に、深く座ると帯をつぶしてしまう恐れがあるため注意しましょう。
また、足を大きく開くと上前がはだけてしまうため、足の開きすぎは避けてください。
■まとめ
着物で美しく正座するには、座るときと立ち上がるときの流れを把握しておくことが大切です。
正座の際に立ち座りを繰り返すと着物の着崩れが気になりますが、大きな動作を避けてゆっくりと動くようにすると、着崩れを防止できます。また、正座の基本的な姿勢を保ち、いくつかの対策を行なうことで足のしびれの軽減もできます。
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